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サブプライムの実態暴露
春山昇華著『サブプライム問題とは何か』

『海つばめ』第1065号2008年3月23日
 二〇〇七年になって、にわかに注目を集めるようになったアメリカのサブプライムローン。このサブプライムローンが昨年六月から八月にかけて世界の金融市場を揺さぶった。その後もアメリカの金融危機や景気後退が強まっている。
 アメリカの金融危機はヨーロッパや日本にも波及。日本では野村証券やみずほ証券等に多額の損失が発生し、新生銀行は赤字転落を防ぐために本店ビルを売却すると発表した。
 こうした全世界を揺るがす問題に発展したサブプライムローンとは何か、ローンを証券化して販売する現在の貸付問題とは何か、そして、サブプライムローンを組み込んだ証券の焦げ付きと住宅バブルの崩壊が金融恐慌へと発展する可能性を明らかにしようとしたのが本書である。
 サブプライムローンとは元来、ローンの延滞履歴があるような銀行口座を持たない低所得者向けの住宅ローンであり、収入が低くても真面目に返そうとする人向けのローンであった。しかし、サブプライムローンは当初の目的とは異なった方向に進んでいった。
 アメリカの経済は二〇〇〇年のITバブル崩壊以降不況下にあった。この不況を脱する手段としてアメリカFRBは超低金利政策(一%)を採用し、この政策が住宅ローン金利の急低下を引き起こし、住宅販売は増加に転じた。
 「不運な巡り合わせはもう一つあった」と著者は言う。つまり、この超低金利により、住宅価格が急上昇を始め、上がり始めた住宅に向かって、株式市場から住宅等の不動産市場へ物凄い勢いで資金が移動するという副作用を伴ったと言うのだ。
 その状況に目を付けた金融業界が、普段は相手にしないような顧客にも金を貸し始めた。住宅の担保価値が急上昇しているので、仮に支払ができなくなっても住宅を処分すれば十分に貸した金を回収できると踏んだからである。
 アメリカの住宅バブルが絶頂期を迎える二〇〇五〜六年に向けて、住宅ローンの貸出競争や「住宅転がし」が激化していった。その結果、サブプライム層も有力なローン対象者とされ、ついには、月々の収入では到底返せないような高利率の詐欺的な支払条件でローンを組まされていった。ここには日本のサラ金同様と化したアメリカ金融機関の悪徳ぶりが具体的にレポートされている。
 こうした住宅バブルを拡大させた要因として、さらに重要なキーワードが住宅ローンの「証券化」にあると著者は言う。
「まず、五〇〇件とか一〇〇〇件といった住宅ローンを、銀行がひとつにまとめ、証券会社などに売却する。その売却されたローンの集合体を証券会社が債券のようなもの(仕組み債)に仕立てる。その仕組み債を所有し配当をもらう権利(持分権)を小口に分け、多数の投資家に販売する。」こうした「証券化」によって、貸す側は金利と手数料を獲得し、ローン自体は他人に売却し(しかも売却益で繰り返し証券化できる)、将来発生する貸し倒れリスクから逃れることができるというわけである。
 さらに、証券化による銀行の住宅ローン売却を後押しする要因になったのが、世界の銀行を規制しているバーゼルTやバーゼルUと呼ばれる自己資本規制だと明解に語る。つまり、銀行はローンを増やす場合一定の割合で自己資本を増やす義務を負うが、多数の住宅ローンをまとめてパッケージして、証券化して売ってしまえば自己資本を増やす必要がないからである。
 しかし、サブプライムの証券化商品が飛ぶように売れたのはなぜだろうか。証券化商品に対してはアメリカの格付け機関がトリプルAを大盤振る舞いしていたからであった。
 こうして、アメリカでは住宅価格は下落しないという神話が作られていったのである。しかし、住宅価格が青天井であるはずがなかった。それまでの浮かれ気分を吹き飛ばす事件がついに起きた。
 二〇〇六年十二月に、世界的な巨大銀行HSBCの株価が暴落したのだ。アメリカの住宅事情の悪化などで不良債権が増加したと発表したからであった。
 さらに、リスク回避として世界に売却していたサブプライムの仕組み債が不良債権化しているとの恐れが広がり、投資家はサブプライム関係の金融機関から資金を引き上げた。そして、ついに欧米の大手金融機関は資金繰りが付かないとして破綻した。
 こうして、昨年七月の世界同時株安後、アメリカの株とドルは暴落し日本やヨーロッパの株も下落し続けている。
 今回の金融危機に対して、アメリカFRBや欧州中央銀行(ECB)は無制限の資金供給を行うと発表した。
 しかし、これはサブプライムの人々ではなく銀行救済策であると著者は断じている。実際、FRB等が実行した資金投入は銀行や銀行子会社が発行したCP(短資調達手段)に対する買いオペであったからだ。
 実に、こうしたCPの担保にまでサブプライムローンが含まれていたことが発覚したのである。まさに、これは著者も指摘するようにアメリカの金融破綻そのものであろう。
(宝島新書)
(埼玉・渡辺)
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